2002年6月香港の時事月刊誌「広角鏡」より 

心の窓の守り神

−香港卓力漢方眼科研究所李卓力医師訪問記−


 香港であっても、彼女の物語は、ひとつの伝奇である。"五十にして天命を知る"といわれる年に、誰が想像出来たでしょう。一人の女性、中国大陸から来た職業婦人が、五十才になった年に、自分の信念により、香港で多くの苦難の中、創業し自分の道を歩き始めた。

 "私は、困難がないと、人は自分の意思を強固にすることは出来ないと思います。本当に そうですよ。以前私も、数々の困難に遭遇しましたが、意思をしっかり持って、それを変えなければ、必ず克服出来ます。私は、自分を信じています。只、時には自分が自信過剰からと思いますがね。"

眼病は、人類最大の脅威のひとつ

 香港のコスウェイベーの繁華街にある、普通の商業ビルの10階に李卓力漢方眼科研究所はある。 研究所は、小さな治療室と控え室、そして小さな薬剤室。人も多くありません。研究と治療内容は、眼科の難病と眼底病などで、その治療方法は、漢方薬と針灸です。

 李卓力医師は、上海生まれ、陝西省で医学を学び、その後日本で西洋眼科医として6年研修し、95年に当時の香港政庁の専門家招聘プロジェクトに応募して、香港へやって来た。すでに50を過ぎてはいたが、英気に溢れ、南方人のあでやかな美しさと、北方人の豪快さ、されには日本式の謙虚な礼儀作法を備えていた。そしてなにより、彼女の専門分野となると、淘淘と話出した。

 眼科疾病の人類に対する危害は、大変大きい。香港では60歳以上の人口の内、白内障を患っている人は、57%,黄斑変質している人が、16%,緑内障を患っている人が、6.3%,角膜混濁を患っている人が、4.6%,青年や壮年の人で、高度近視により、眼底出血を起こし、そのことで視力に障害を起こしている人もたくさんいます。

 西洋医と漢方医では、治療の方法が全く違います。西洋医は、局部の変化に重きを置き、科学的検査方法で、検査します。その診断は、漢方医より正確であり、手術も大変すばらしい。但し、西洋医の手術は、一種の眼球に対して、傷をつけることであり、多くは、そのことで合併症を起こします。また、いくつかの比較的複雑な病状では、西洋医には往々にして打つ手がありません。その上、一部の眼科疾病の初期症状では、西洋医には病変や異常を見つけられないこともあります。漢方医は、それとは違い、人の全身の状況から、眼病の原因を認識し、分析して治療します。漢方では、眼球のみに限らず、患者の眼病を治療すると同時に、その他の全身の疾病も治療します。
 特に、西洋医学で難病とされている、例えば葡萄膜炎や黄斑の老化、視覚膜の変質などの疾病に、漢方医学を用いて治療すると、思いがけない成果が出ます。

漢方医学は、こんなに自然に近い物です。

 1999年以来今日まで、研究所成立後、わずか3年あまりの間に、李卓力医師は、すでに250以上の症例の研究と、1万人以上の患者の治療をして来ました。日本に留学していた関係で、流暢な日本語で対応できることもあり、彼女の患者の三分の一は、日本人です。

 北海道の30歳の電気工学博士は、緑内障を患って、判った時には、すでに半分の視力を失っていた。西洋医に行った彼は、すでに手の施しようがないと宣言されました。 しかし自分が次第に盲目になっていくのを我慢できず、インターネットで見た卓力漢方眼科研究所の資料を基に、李卓力医師にe-mailを送って、彼女の漢方医としての見解を問い合わせてきました。"私は、漢方医の見地からすると、貴方の目は決して単純に悪いとは言えないと思います。貴方の眼圧は、正常です。正常な眼圧の目が、どうして緑内障を患うのでしょうか? これは、貴方の眼球自身の問題ではなく、体全体の問題です。漢方医としての見解は、気血が、眼球にまで達していて、人ははじめて物を見ることが出来ます。私の個人的経験からすると、70%の緑内障の患者の性格は、せっかちで、物事に対して、過度に真面目な為、脈拍を早め、血液の循環が異常になり、心臓から送られる血液量が減り、それにより眼球への血液不足を起こして、眼球の抵抗力を低下させています。この種の性格は、遺伝的なものです。私の処方した漢方薬を試し、同時にまず貴方のせっかちな性格を治して、気持ちを落ち着かせ、気血の流れを整えることをお薦めします。この種の方法で、緑内障を治療していくと、私のいくつかの症例からも、良い効果が上がっています。

 彼は、私の説明を聞いて、ハッとしたようです。"漢方医学の見解は、こんなに自然に近く、人の生理に近いのかと。また、先生の話にあったように、僕の祖母も緑内障でしたし、家族全員せっかちで、慌てやすく、怒りっぽい性格です。僕も、仕事が終わらないと、動悸がして、心臓が始終痛みます。"

 その後まもまく、この電気工学博士は、日本から卓力漢方眼科研究所に治療を受ける為に、わざわざ香港へ来訪されたのです。李医師が、彼の脈を計ると、毎分88回ありました。薬を処方した翌日には、脈は安定してきました。ところが、二三日するとまた、脈が速くなってしまいました。彼女は、彼に今日また怒ったのかと聞くと、彼は、今回彼に付き添って香港に来たガールフレンドと喧嘩したと言うのです。彼女、彼女のお母さんとその同僚は、香港でたっぷり遊んだ後に、また中国大陸に遊びに行ったそうです。出発の際に、彼女たちは時間がなくて買えなかった商品リストを渡して、彼に全部買い揃えてほしいと頼んだのです。彼は、話を聞くなり、カッとなってしまいました。僕は、治療に来ているので、何でこんなにたくさんの買い物に行かなければならにのかと。

 私は、彼にもし貴方がほしいものが見つかったら、香港に残っている人に頼んで買って貰うのではないですか。そのようなこともあるはずでしょう。これは、自然なことですよ。何で怒るんですか? これは、私の処方した薬の量が足りないということですね。その後、私は処方薬の量を増やしてみました。彼が香港を去るときには、心拍数は毎分65回に下がっていました。
 私の最も得意とするのは、針で視神経を刺激することです。彼の場合も、視神経収縮という事でしたが、私が眼球から直接針を入れて、視神経を何度か刺激すると、彼の眼圧はかなり低くなり、眼球も柔らかくなって、彼自身も明るくなったように感じてきました。彼は、香港に数日しかいられなっかたので、一ヶ月分の薬を持って帰りました。いずれにせよ、漢方が彼に新しい希望を与えたのです。

創業苦

  漢方眼科の理念を信じて、李卓力医師は、香港卓力漢方眼科研究所を創設しました。この年、彼女はすでに50歳を過ぎていました。95年始め、李卓力医師とその夫(電機通信技術の専門家)は、共に香港政庁の専門家招聘プロジェクトの招聘を受けて、日本から香港に移り住んだ。李卓力医師は、香港中文大学医学院の招きで、眼科視覚電気生理学の副研究員となった。香港中文大学での数年の仕事の中で、彼女は、国連世界保健機構の香港で行われた"高齢者の視力調査と研究"のプロジェクトにも参加し、眼科疾病が深く香港市民に危害を与えており、特に中高年の健康を著しく脅かしている物のひとつだと感じた。
 また、現在の西洋医学の治療法では、その治療はかなり限界があることも感じた。そこで、彼女は自ら研究所を設立し、漢方医学の方法で、眼科の疾病を治療する研究と治療を行い、香港市民が眼科の疾病の苦痛から開放される為に、西洋医学とは違った選択を提供しようと決心した。

 "商業登録申請時に初めて、自分が香港で、眼科を専門に治療する漢方医であることに知りました。全く私という人間は、仕事をする情熱と、度胸がありましたから、これが如何に難しいことであるかとは全く知りませんでした。当時は、自信過剰だったのです。私は、しっかりした西洋医学の基礎があり、研究もこれだけ深くやってきた。見たことのない症例は、ないはずだ"と考えていたのです。

 ところが、これが大変難しいことだったのです。患者は、0から次第に、まず友達、後に知り合いと広がり、徐々に評判を得ていきました。彼女の医術の高さを聞き及んで来る患者は絶えることなく増えていきました。 また、研究所創設と同時に、インターネットのホームページを立ち上げ(http://www。Eyetreat.com/index.htm)、まず中文で、次に英文と日文で、ヤフーのホームページを通して、世界中に発信しています。内外の多くの眼科疾病患者は、このヤフーの中文或は日本文の彼女のホームページを探し出し、e-mailのやり取りをして、交流し信頼関係を気づいてから、彼女の治療を受ける為に、香港に来ます。

 彼女は、非常に優秀な医師ではありますが、しかし経営という意味では全く精通していません。研究所に治療に来られる患者の多くは、往々にして西洋医から"眼科での不治の病"を宣告された患者で、だめもとと思いながら、最後の望みを持って彼女の所にやってきます。彼女は、誠心誠意症例を検討し、薬を処方して、最後に漢方の方法で、西洋医が不治の病とした眼病を治癒させた時に、その成功の喜びで、一番重要なことを忘れてしまうのです。つまり集金。
 また、ある時は生活保護を受けているような低い階層の市民の患者に出会うこともあります。そんな時、彼女は、つい"いいは、貴方が出せるだけでいいの。お金なくても、治して上げるから"と言ってしまいます。患者は、"貴方は、他のお医者さんとは違う。治療は、お金の為だけではない。"と感動してくれます。
 しかし、それ以来、私は毎月赤字を出して、良い人をしなければなりませんでした。
 研究所が始まってまもなく、彼女のご主人が急死しました。ご主人と彼女は、結婚20数年目で、西安から東京、そして香港とずっと支えあって来ました。この突然のショックに、彼女は打ちひしがれてしまいました。"彼は、疲れすぎていました。日系の香港企業の技術主任として、真面目過ぎ、責任感が強すぎたのです。私は、自分の研究所の事が忙しくて、ここ一年あまり彼の世話を良くして上げてませんでした。 毎晩遅く帰ると、彼がいつもご飯を作って、私の帰りを待っててくれました。週末は、彼も休みもしないで、研究所に来て、棚を付けてくれたり、釘を打ってくれたりと、本当に大変でした。彼の具合が悪くて、入院した時も、ちょうど日本から患者さんが来ていて、毎日治療しなければならなかったので、主人に付き添って上げられませんでした。思いもかけず彼は、入院の三週間後に突然亡くなってしまいました。その時ちょうど私自身も更年期障害で、いつもイライラしたり、火照ったり、ストレスが出たりと、本当に私の一生で一番苦しい時期でした。"
 しかし、彼女は、何とかそれを切り抜けて来ました。彼女の漢方眼科研究所は、まるで台風の中でも倒れない小さな樹木のように、今では大きく育ち、新緑の若葉を芽吹かせています。

漢方と西洋医学を結びつける道を進みたい。

 李卓力は、決して西洋医学を否定している訳ではありません。実は、全くその逆で、この数年彼女は、非常に優秀な西洋医学の医師であった。大学は、西安医学院医療系医学専門学科で、西洋医学を学び、卒業後は西洋医として、多くの治療経験を積んで行きました。
 また、89年に日本へ眼科の研修医として、東京医科歯科大学眼科で高度近視の手術について専門の研究を行い、外国人医師免許(日本での医師免許資格)に合格した後は、慶応義塾大学医学部の眼科で、訪問学者として、視覚電機生理学の研究を行った。これらの研究もやはり西洋医学でした。 96年香港中文大学医学院眼科の副研究員として、香港全土で一台しかない眼球の黄斑病変の検査を行う電気生理機の管理を専門に行っていたのも、西洋医学の医師としてでした。
 しかし、日本で研修医をしていた時に見た医療事故の衝撃は、彼女をもっと安全で、副作用の少ない、眼球に傷のつかない治療法をしたいという気持ちにさせた。  漢方は、中国の伝統と文化の貴重な宝です。しかし、漢方のあの陰陽、虚実などの表現方法は、東洋の神秘主義の意味を含んでおり、現代人には、その底がどれだけ深いかを探し出せない。大学の時代にすでに彼女は、この漢方に大いに興味を持って、漢方医学の系統的教育と訓練を受けました。
 日本の慶応大学で医学の造詣を深めていた時、医学院の同僚の人たちが、漢方に興味を持ち、漢方薬と針灸が神秘的と感じていたので、彼らの為に講義をしてほしいとの希望を受けて、講義を行う約束をしました。ある日の午後2時間を使って話をしましたが、彼らには理解できませんでした。私は、彼らの疑問に答えて、その後再度講義をしましたが、やはり理解されませんでした。彼らは、皆西洋医学を勉強しており、西洋医学で強調されるのは、実際に見た物は何か。それを受け入れられるのです。しかし、漢方医学というのは、西洋医学のいう所の物は見えないのです。 例えば、私が陽虚、陰虚と言えば、彼らは陰とは、陽とは何かと質問してきます。私が陰陽とは一種の気の旺盛さと虚弱を示す物だと言えば、彼らは、それでは気とは何かと質問してきます。陰陽と気はどちらも見ることが出来ない物です。その為、彼らには理解出来ないのです。その後よく考えてみると、私たち中国人は、祖先伝来の環境の中で、小さい頃からこのような観念を受け継いできており、漢方医学を学ぶにあたって、このような理解の困難は、ありません。私たちは、漢方をより発掘し、世界中に鳴り響かせなければならないのです。

 もちろん、西洋医学には西洋医学の長所があります。例えば、眼科疾病の診断に於いて、陰陽弁証法の漢方医学の論理のみで診断する場合には、偏りがあります。李卓力医師は、漢方医学を使って、眼病の研究や診察をする際に、同時に西洋医学の先進的機材や設備を使うことも、非常に重視しています。例えば、いつも西洋医学では使用する視覚電気生理学の技術を使用し、網膜の各種の細胞の生物電機反応を測定する方法は、彼女もよく使っており、視力、視野の分析や敏感度合いの能力を分析し、漢方治療の成果を観察、検証しています。また、眼球の針灸治療を行った場合も、西洋医学の眼球解剖生理学とその治療法を大変重視しています。針灸は、大変古い歴史のある治療法ですが、これに現代科学の精神を注入するのです。
 ある離島に住んでいる32歳の建築士の香港人女性が、視覚膜色素変質症を患って、李卓力医師の治療を受けると、視野が5度広くなり、視力も0.4から0.8に上がりました。しかし、彼女は、不思議そうに李医師に尋ねました。"なぜ私は、船の上から山を見ると平らに、見えて遠近感がないのでしょう。立体感覚が無くなったのでしょうか?"と。
 李医師は、笑いながら"いい人に聞きましたね"と言いました。李卓力医師は、日本で研修時に先進的測定装置を使って、眼球内部の各細胞を深く観察、研究していました。そこで、彼女は、患者に眼球の立体を見る細胞がまだ回復していない為ですよと話し、そして再び針灸の刺激を使って、彼女の眼球の立体視覚細胞の中核の部分を刺激しました。 4回の針治療後、患者はうれしそうに、山の立体感が判るようになったと話しました。  "私は、絶え間なく新しい高いレベルの科学技術を採用し、専門に眼科の難病の研究をしています。特に、眼底病の漢方治療について研究を行っています。私の研究は、多くの眼病患者を救い、彼らが再び光を取り戻す為に、そして眼科漢方学が急速に発展する新技術時代に追いつくことが目的であり、私の理想であり、患者さんの希望です。"

(文責:翻訳者)

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